「旅行に行くとさぁ、突然写真送ってきたりするんだよね。それが『あ、私のこと思い出してくれたんだな』って凄く嬉しいんだ。」
わたしの友達が言っていた、恋する相手の好きなところ。
男性の共感を得られるかはわからないけれど、わたしはすごく共感してしまった。
旅行っていう非日常へ行っている時に、自分のことを思い出してくれること。その人が見ている風景をおすそ分けしようって思ってくれたこと。その特別な感じ。
自分が日常という現実世界で生活している時に、ふっと送られてくるここではない何処かの空気。
わたしが子供の頃、父が海外に長期出張をしていた時によくエアメールを送ってくれた。
白地に青と朱のラインが入った封筒はわたしにとって特別で、わたしはその封筒から異国を感じていた。
見たことないスタンプ、日本語じゃない文字で送られてくるお手紙。
封を切ると知らない国の匂いがふんわりと漂ってくる。その中に入っている、見たことがない景色の写真。
父が異国の地からわたしと母を思って綴った手紙。
父の出張先に会いに行った時は、現地から自分宛に葉書を送った。外国のわたしから、日本のわたしへ。
今はインターネットがあるから、海外からの郵送物なんて海外のサイトでお買物した時くらいでお手紙が来ることなんてないけど、旅先からLINEやメールで写真が送られてくるとわたしの頭の中にはエアメールの封筒が見える。
SNS全盛時代の現代はリアルタイムに旅先の風景を載せることができるし、わたしも旅行に行ったらSNSに写真を載せたりしてるけど、メールやLINEでわたしだけに送られてくる写真やメッセージはわたしだけに宛てられたもの。
わたしは、わたしだけに送ってくれるお手紙が嬉しい。
わたしも、SNSには載せてない写真をそうっと、送る。
かつてボーイフレンドが海外に行く時、戯れに「現地から写真送ってね」って言ってみたことがあった。
まあ、旅先で楽しんだり忙しくしてるだろうからってあんまり期待はしてなかった。
もしかしたらSNSに写真をアップしてたかもしれないけど、わたしは見なかった。わたしのことを思い出した時に、わたし宛のお手紙が欲しかったから。
そしたら、ある日ピョコっと写真が送られてきた。「最高」ってキャプション付で。
友達と同じようにその時わたしも、遠いところでわたしのことを思い出してくれたんだって思ってすごく嬉しくなった。
目には見えないけれど、宛先がわたしになってるエアメールがはっきり見えた。
実際にはスマホをタップするだけの作業だけど頭の中ではペーパーナイフで丁寧に、でも早く中を見たくて焦るような気持ちで封を開けるように画像を開く。
その時わたしは世界でいちばん優しい顔をしてたと思う。だってそこには、愛があるから。愛の種類は問わないよ。愛のカタチはひとつじゃない。
そしてその時の気持ち、送ってくれた写真、どちらもがわたしの宝物になって蓄積されていく。
父からのエアメール、ボーイフレンドからのメッセージ、友達からのLINE。
旅先からの手紙はどれも愛を感じて、嬉しくて、でもその物理的な距離がちょっと切ない、素敵な贈り物だ。
ちなみに余談だけど、わたしが外国からメールを送った時に来たお返事で最高に萌えたのは「早く帰っておいで」です。