むかしむかし
あるところに、夏が近づいてきているというのにダイエットの成果がなかなか現れず焦っているおばさんねえさんがおりました。
ねえさんは、食事制限(といいつつ週に数回痛飲)とジム通いだけではもう間に合わない!と思い、人生ではじめてエステにいくことを決意しました。
いんたーねっとで、初回限定3,500円!脂肪冷却で部分痩せ!というエステのチケットを見つけてしまったからです。
脂肪冷却とは
おねえさんはとにかく腹肉をどうにかしたいと焦っておりました。
思わずポチっとしてから、脂肪冷却について調べました。
脂肪吸引は知っていましたが、冷却というのははじめて聞いたからです。
「脂肪細胞を冷却」というものが化学的根拠に基づいたものなのかいまいちわかりませんでしたが、藁をもすがる思いのおねえさんは「3,500円だし、とにかく試してみよう。」と思ったのでした。
凍らせて老廃物となった脂肪細胞を、自然に体外に排出させるため効果が出るまで1ヶ月くらいかかるという文言には目をつぶりました。
ねえさんに残された時間は2週間しかありませんでしたが……。
迷子スキルをいかんなく発揮
エステの場所は渋谷にありました。松涛のほうです。
渋谷に来ることは多くはありませんが、若い頃から飲み会やライブで何度も足を運んできた街です。
人ごみが苦手なので代々木公園から歩こうかと思いましたが、ねえさんは渋谷から行くことにしました。
ハチ公口を出ると観光客がハチ公の写真を撮っています。
先日放送された「月曜から夜ふかし」でハチ公が意外と小さくてショックを受けていたお姉さんのことを思い出してニヤっとしながら、余裕の足取りでスクランブル交差点を渡り道玄坂を登り始めました。
するとどうでしょう、
天才的な方向音痴スキルを発揮して渋谷のラブホ街に迷い込んだ
— にゃぼん🖇 (@Jabobeat) 2017年6月16日
気づいたら全く逆の方向に来ていました。
軌道修正をすべく、真昼のホテル街をさ迷いながら予定の倍の時間をかけて予約時間に遅刻してエステに到着しました。
ちなみに渋谷駅から目的地まで、ねえさんは地理を把握しているつもりでも自分を信用できなかったのでずーーっとぐーぐるまっぷを開いて歩いていました。
蝸牛のしわざなのかもしれません。
「失礼、噛みました!」という幼女*1に出会った憶えはないのですが……。
いざ尋常に脂肪退治!
ねえさんがたどり着いたエステは、マンションの一室にありました。
ワンルームをカーテンで仕切って施術室を無理やり2つにしていました。
ちょっと不安な気持ちになります。
ねえさんが買ったチケットは脂肪を暖めて溶かすやつと、脂肪を凍らせて死滅させるという相反する施術をしてくれるというものでした。
とにかく腹肉が少しでも減るならなんでもいいです。
全裸にバスタオルを巻き紙パンツを穿いて、人生初エステです。
あっためて溶かす施術は30分ほどで終わりました。
いよいよ脂肪冷却です。
まずおなかに冷たいシートをひいて、おなかに2つ半月型の吸引器を平行に並べ、こんな機械で腹肉をギューっと吸いながら冷やしていきます。
最初のうちは吸引力と冷たさで、ヒィー!となっていました。
ねえさんが無表情で(内心冷たい!吸われる!と大騒ぎしてました)施術を受けていると、エステティシャンのお姉さんから
「一回では全く効果実感できないんですけど、何回か受ければ全然違いますから〜」と営業を受けました。
「一回じゃ全く効果出ないんですか?」
全くという言葉に驚いて聞き返すと、お姉さんは無情にも「そうですねぇ、全くわかんないです」と追い討ちをかけてきました。
わたしは何しにここに来たんじゃろ?とねえさんは広島弁で思いました。
お姉さんの えいぎょう こうげき!
「今回はチケットで受けて頂きましたが、次回も少しお安くいちまんえんで受けられますよ!よその美容外科さんはお高いですけど、うちはお安くさせて頂いてますので♪」
ねえさんは どうする?
→しつもん
かう
にげる
「どうしてそんなに安いんですか?」
お姉さんの こたえる こうげき!
「……(逡巡する間)…、うちは個人でやってるので…」
「よそはほら、美容外科ブランドで高くしてるんですよ!」
ねえさんの脳裏には「個人」「マンションの一室」という言葉がぐるぐる回り始めました。
たまにニュースで見る、無免許でエステとかマツエクとかやって摘発される系!?!?(脂肪冷却が免許いるのか知らないけど)
普通の美容外科のエステなら高いって言うからなんで安いんですか?って訊いたら「……個人なんで…」ってマンションの狭い一室で言われた時のわたしの気持ち「無免許?」「摘発?」「いま全裸紙パンツなのに?」
— にゃぼん🖇 (@Jabobeat) 2017年6月16日
エステについてよく知らないので、資格がなくてもこういうお店を開けるのかわかりません。ただ、施術の効果よりも別の不安がむくむくわきました。
そこから2人は無言になり、お姉さんは「吸引は60分なので終わったらまた来ますね♪皆さん最初は冷たいと言いますが寝てしまうんですよ〜寝てていいですからね〜」と部屋を暗くして出ていきました。
脂肪冷却の機械がねえさんの腹肉をギュイーンと吸い取る音だけが部屋に響き渡ります。
こんな状況で眠れるか!と思いましたが、ねえさんはおつゆだくだくエステに来たようです。
気づいたら60分が経過していました。
機械とシートをはずし、ジェルを拭き取ってもらいます。
「お腹触ってみてください♪」と言われ触ってみると、めちゃくちゃ冷たくなっていました。
今のねえさんのお腹なら保冷剤として使えそうです。
それくらいどんびえになっていました。
「わたしたち手作りで生酵素作ってて、その生酵素でジュースを作ってるんですけど初回は1080円でお出しできるんですがいりますか?」
ふいうちの えいぎょう!
ねえさんは ことわった!
「いえ、大丈夫です」
「(明らかにテンション下がった声で)わっかりましたー。お茶はいりますか?」
「あ、じゃあ冷たいお茶をお願いします」
「ではお着替え終わりましたらロビー(ロビーなんてあったか?)にお越しください♪」
着替えを終えて施術室を出ようとカーテンを開けたら隣の部屋が丸見えでした。
隣の部屋で施術を受けている女性が丸見えでした。あの、いわゆる男女があの…カエルのポーズしててねえさんは思わず目を瞑って外に出ました。
お茶をいただきながら再びえいぎょうのこうげきを受けましたが、ねえさんはのらりくらりとかわしてマンションをあとにしました。
真昼間のホテル街を彷徨ってたどり着いたエステでの不思議な体験は全てが白昼夢のような出来事でした。
見事脂肪退治を終えた(かどうかはわからない)ねえさんは、再び迷子にならぬよう帰りは代々木公園駅から帰路についたのでした。
めでたし、めでたし。
*1:©️化物語